なぜ人が辞めるのか?ブライダル業界に必要な「心理的安全性」

ブライダル業界専門
人材採用・育成コンサルタントの佐々木寿美子です。

「またスタッフが辞めてしまった…」
「面談では何も言わなかったのに、急に退職願が出た」

サービス業・ブライダル業界では、こうした声をよく耳にします。
忙しさも、プレッシャーも、人間関係の距離も近いからこそ、人が辞める原因はスキルよりも心理的な不安にあります。

「心理的安全性」
これはGoogle社が高業績チームの研究から発表した概念で、
チームの中で、自分の考えや感情を安心して話せる状態のことを指します。

心理的安全性が高い職場ほど、離職率が低く、ミスが起きても報告が早く、チーム全体のパフォーマンスが上がることがわかっています。

では、なぜ心理的安全性が欠けると人が辞めるのか?
そして、それをどう高めていけばよいのでしょうか?


■「本音が言えない職場」ほど、人は静かに辞めていく

ある結婚式場では、スタッフの定着が長年の課題でした。
仕事自体に不満を言う人は少なく、皆「お客様のために頑張りたい」と口にします。
それでも、気づけば半年〜1年で辞めてしまう。

退職理由を丁寧に聞くと、意外な共通点が見えてきました。

「相談しても『みんなも同じ状況で頑張ってるし』で終わってしまった」
「失敗したら怒られると思って、誰にも言えなかった」
「上司が忙しそうで話しかけにくかった」

仕事の厳しさではなく、安心して話せない環境 が人を追い詰めていたのです。

つまり、離職の根本原因は「負荷」ではなく「孤立」。
職場に心理的な安心がないと、人は少しずつ心を閉ざし、やがて静かに離れていきます。


■心理的安全性が高い職場の3つの特徴

心理的安全性がある職場とは、どんな状態でしょうか?
ブライダル・サービス現場の事例から見えてきた共通点を紹介します。

①間違いを責めず、学びに変える文化

ある式場では、プランナーが打ち合わせの日程を二重で予約してしまうミスが発生しました。
以前なら「どうして確認しなかったの?」と叱責される場面です。

しかし、上司はこう言いました。

「起きてしまったことは仕方ない。次に同じことが起きないように、仕組みを一緒に考えよう」

ミスを個人の責任ではなく、チームの学びに変えたことで、
スタッフは「報告しても大丈夫」と感じ、以後、ミスが減少。
安心して声を上げられる雰囲気が定着しました。


②立場に関係なく意見を言える

別のブライダル企業では、朝礼でアルバイトスタッフが「昨日の案内表示が分かりにくかった」と発言しました。
以前なら「前から決まっていることだから」と言われかねません。

ところが、マネージャーは「いい気づきだね。今日から改善しよう」と即採用。
そこから社員・パート・アルバイトの垣根がなくなり、意見を出し合う文化が根づきました。

心理的安全性は「誰が言ったか」ではなく、「何を言ったか」で判断される環境の中で育ちます。


③上司が正解よりも問いを大切にしている

心理的安全性が高い職場の上司ほど、指示よりも対話を重視しています。

「○○さんはどう感じた?」
「やってみて気づいたことは?」

こうした質問が日常的に交わされることで、スタッフは「考える力」と「自己表現力」を身につけ、受け身ではなく主体的に動くようになります。

逆に、常に「正解」を求められる職場では、挑戦よりも“失敗しないこと”が目的化してしまいます。
これが長期的にモチベーションを下げ、離職につながるのです。


■心理的安全性を高めるための3つのアクション

では、具体的にどうすれば心理的安全性を育めるのでしょうか?
今日から始められる3つのアクションを紹介します。

1. 「聴く姿勢」を見せる

忙しい上司ほど「あとで話して」と言いがちです。
たとえ3分でも、“目を合わせて聴く”ことでスタッフは受け止めてもらえたと感じます。
話の中身よりも、聴いてもらえた体験が信頼をつくります。

2. 「できたこと」を言葉にして伝える

「昨日より成長したね」「あの対応、良かったよ」と具体的に褒める。
承認の言葉が増えると、スタッフは「この職場で自分は価値がある」と実感し、心理的安全性が高まります。

3. 「チームで共有」する時間を持つ

忙しい現場ほど、“振り返り”が後回しになりがちです。
1日5分でも良いので「今日うまくいったこと」「明日やりたいこと」を共有する場を持つと、
チーム全体に前向きな空気が流れます。


■心理的安全性は「甘さ」ではない

「心理的安全性」と聞くと、「厳しさがなくなるのでは?」と思う人もいます。
しかし、心理的安全性とは優しさではなく、信頼に基づく厳しさです。

たとえば、上司が「あなたならもっとできる」と信じてフィードバックをすること。
ミスを叱るのではなく、「次にどう生かせるか」を一緒に考えること。
これこそが、本当の意味での「安全な挑戦環境」です。

心理的安全性がある職場では、メンバー同士の指摘や意見交換も活発。
意見を言い合えるのは、お互いを信頼している証拠なのです。


■心理的安全性が高まると、離職率は確実に下がる

心理的安全性の高いチームでは、こんな変化が起きます。

  • ミスが起きても隠さず共有できる

  • 「どうせ言ってもムダ」がなくなる

  • スタッフ同士のフォローが増える

  • お互いの成長を喜べる雰囲気になる

こうした安心の土台が整うと、人は辞めません。
むしろ「このチームでもっと成長したい」と思うようになります。

あるブライダル企業では、心理的安全性をテーマに研修を行った結果、
離職率が1年で25%→10%に改善しました。
「言っても大丈夫」「相談してもいい」──この空気が、組織を強くしていくのです。


■人は、安心できる場所でしか力を発揮できない

離職率を下げたいなら、制度よりも先に「空気」を変えることです。

心理的安全性は、ルールや仕組みではつくれません。
それは、日々の声かけ・表情・リアクションの積み重ねの中にしか存在しません。

人は、安心できる場所でしか、本当の力を発揮できません。
上司や仲間が「大丈夫、一緒に考えよう」と言ってくれるだけで、人はもう一歩前に進める。

職場に安心の一言が増えたとき、離職率は自然と下がり、
支え合いながら成果を出すチームへと変わっていきます。

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