ブライダル業界専門
人材採用・育成コンサルタントの佐々木寿美子です。
「最近、若手の雰囲気が重い」
「最初は明るかったのに、徐々に元気がなくなってきた」
「辞めるという前兆もなく、いきなり退職の申し出がきた」
ブライダル業界・ホテル・サービス現場で、よく聞く声です。
若手社員は素直で吸収力がある一方、負担が積み重なると突然離職を選ぶことも珍しくありません。
彼らは怠けているのでも、気持ちが弱いのでもなく、ただ 「続ける理由が見えなくなる」 のです。
しかし、やる気を失わせているのは、本人の未熟さだけではありません。
多くの場合、職場と若手の間にある“3つの勘違い”が静かにやる気を削っていきます。
そしてこの勘違いは、会社も若手も気づきにくいものです。
今日は「辞める前に気づきたい視点」として、3つの誤解と改善策をお伝えします。
■勘違い①「優しくすれば定着する」
近年は叱責が問題視され、ハラスメント防止のために強めの指導が避けられがちです。
その結果、
注意しない=優しい
優しい=働きやすい
働きやすい=定着する
という誤解が生まれます。
しかし、若手がやる気をなくす最大の原因は
自分が成長できている実感の欠如 です。
人は「昨日よりできた」に喜びを感じ、「任せてもらえる」「認められる」に意義を感じます。
優しさだけで改善がないと、若手はこう捉えます。
「成長していないのかも」
「フィードバックがない=期待されていない?」
優しさだけではやる気は育ちません。
必要なのは
優しさ × 具体的な助言 × 小さな挑戦の機会
本人の強みも弱みも言葉で伝えることが、やる気を燃やす火種になります。
■勘違い②「任せれば伸びる」
任せることは信頼の証です。
しかし、任せる=丸投げ ではありません。
ある式場では、入社半年のスタッフに複数業務を並行で任せていました。
挑戦の機会としては良いことですが、フォローがなければそれは期待ではなく不安になります。
若手の内心はこうです。
「任せてもらえるのは嬉しい。でもミスが怖い」
「確認したいけど先輩が忙しそう」
「自分なりに頑張った結果、違っていたらどうしよう」
任せるだけでは人は伸びません。
必要なのは、
任せる勇気 × 支援の仕組み × 終わった後のフィードバック
任せたら放置ではなく、終わったあとに一緒に振り返ること。
挑戦が挑戦として意味を持つのは、成長につながったと実感できたときです。
■勘違い③「言わない=大丈夫」
若手が声を出さないとき、多くの組織はこう判断します。
「問題なさそう」
「自分で考えているのだろう」
しかし沈黙の背景には
-
聞くタイミングを掴めない
-
忙しそうで声をかけづらい
-
怒られるかもしれない
-
評価が下がるかもしれない
そんな「不安」が隠れています。
やる気がないのではなく、迷いを抱えたまま動けなくなっている状態です。
そして誰にも相談できず、一人で抱え込んだ結果、離脱は突然訪れます。
■ここで重要な追加視点
◆若手にも問題はないのか?──答えは「ある。しかしそれだけでは不十分」
現場ではよくこう言われます。
「話しかけられない若手にも責任がある」
「自分でタイミングを見て動くべき」
この考えはあると思います。
確かに社会人として、主体性・自走力は不可欠です。
しかしここで大切なのは
主体性は“環境によって育つ能力”であるという視点。
声をかけて否定された人は次に声をかけづらくなり、
質問が遮られた経験は「聞くのは迷惑」と学習します。
つまり、
若手が動けない=怠けている
ではなく
動いた結果の安心が得られなかった可能性があります。
とは言っても、若手と職場、どちらも伸ばしていくものがあります。
例えば職場がつくるのは、質問が歓迎される空気
若手が持つ姿勢は、相談のタイミングを逃さない勇気
など。
一方だけが頑張る組織は壊れ、双方が歩み寄る組織は伸び続けます。
■若手のやる気を守る「現場で使える処方箋」
1. 小さな成長を一緒に見つける
「昨日より声が出ていた」「準備が早くなった」
1つの承認は10の行動につながります。
2. 任せたら終わりにせず、必ず対話して終わりにする
成功・失敗の価値は次につながるかどうかです。
3. 若手にも責任を持たせる
「明日はどれをやってみる?」と問いかけ、
常に受動ではなく、能動に変換させる習慣をつくります。
4. 不安を可視化させる
「今の10段階の気持ちは?」で感情を言語化します。
■まとめ
若手は弱いのではなく、
やる気の使い方をまだ知らないだけ。
そして組織は甘いのではなく、
育て方の選択肢をまだ持っていないだけ。
若手が気持ちを閉ざす前に、
職場と本人の両面から成長を支える関わりが必要です。
若手が辞めるのは能力不足ではなく、
未来が見えなくなった瞬間。
視点が変われば、若手はもう一度走り出します。
言葉が変われば、離職は止まります。
そして、
環境が変われば、人は驚くほど強く育ちます。